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攻殻機動隊特集 第6回「うってつけの日」

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ホントは「素子と時計」をやりたかったんですけど、思いのほか文章が思いつかないというか考えがまとまらないといった感じなので無期限保留として、その代わりに今回は「うってつけの日」をお送りします。

「うってつけの日」攻殻好きならば第10話 「密林航路にうってつけの日」を連想するかと思います。ただしこの話はストーリー進行上どうしても避けられないグロテスクかつ奇妙な内容のため地上波では放送されていないので地上波でご覧の方は知らないかもしれません。

ところで、サリンジャーを読んだ方なら「うってつけの日」といえば「バナナフィッシュにうってつけの日」ですね。

実はこの2作は名前の共通性からも見られるように、ストーリーにおける主軸、メッセージ性に共通性が見られます。


○ストーリー概要
・「密林航路にうってつけの日」
生きたまま女性の皮膚をナイフではがすという残忍な連続殺人事件が発生する。
犯人は元米帝海軍軍曹のマルコ・アモレッティー。
彼は除隊後行方不明になっていたが、事件とともに現れ、それを9課と犯人引渡しの要求に来たCIAが走査するというストーリー。
「皮膚はがすって…そりゃOA出来ないよ……」が素直なところの感想。

・「バナナフィッシュにうってつけの日」
「グラース・サーガ」と称されるサリンジャーの連続作品のうちのワンピース。
グラース家長男のシーモアが旅行中に自殺に至るまでを書いたストーリー。
シーモアはヨーロッパ戦線経験後除隊中の状態。
精神が非常に不安定な状態。

ここからマルコとシーモアに戦争経験後、除隊という設定が共通していることが分かります。


結論から言うと、シーモアは戦争によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)になっており、これにより自殺します。
そのひとつのきっかけになったのはバナナフィッシュについての少女との会話です。
バナナフィッシュについてシーモアが少女に話してやり、その後海に遊びに行くと少女は「バナナフィッシュを見た。」といいます。
もちろんバナナフィッシュはシーモアの架空の生物ですから、実在はしないわけです。
つまり、シーモアはこんな小さな少女でも平気で嘘をつくことで、社会に対する不信感、疎外感がピークに達します。
もうひとつはそんな不安定な状態のシーモアになんら関心を示さない妻のミュリエルの存在でしょう。
彼女は本文中で「若い女」としか表記されないように、困っている夫を持つ妻としての役割を果たそうとせず、一緒にビーチに旅行に来ているにもかかわらず、一人ホテルに篭って昼まで起きず、起きてからはマニキュアを塗ったり、母親と電話をしたり、タバコをすったり、とにかく夫に関心を示しません。
PTSDの症状の一部に社会システムからの孤立感・疎外感というものがありますが、こういったものがシーモアを自殺させたのでしょう。
「でしょう」と言うのは、この「グラース・サーガ」はまだ完結しておらず、今後違った展開になる可能性があるからです。


一方のマルコですが、彼は作品中の様子を見るに、あきらかに「まだ戦争が終わっていない」と錯覚しているようです。
「戦争はどの時点で終わりか」なんて哲学的なことはここでは無しにして、物理的に戦闘が終わった状態を戦争が終わったとするならば、彼は一種の妄想か、或いは狂乱によって行動していると見て取ることが出来ると思います。
これもPTSDの症状の一部で、現在の状況を性格に判断できないといったものや過去の辛い経験を過度に避けようとする現象があります。
この際の過去の辛い経験とは間違いなく戦争の事でしょうが、つまりはやく戦争が終わって欲しいがために考案された「相手の皮膚をはぐことでその戦意を著しく喪失させる」と言う行為を、戦争が終わっていないと錯覚しているマルコは今もなおその行為を繰り返すわけです。


こういったことからこの2つの作品は戦争によるPTSDについて書かれていると推測できます。
だからこそ「密林航路にうってつけの日」というタイトルは、
サリンジャーの中でもっともPTSDにより悲惨な結果となった「バナナフィッシュにうってつけの日」を模している。といえると思います。



あぁ、思いのほか短くなってしまった。
ので画像でも追加して誤魔化してしまいましょう 笑
ですが、もちろんちゃんと考察してみましょう。


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最初から機嫌の悪いバトー。
マルコのかかわった作戦に居合わせた経験があり、そのことを思い出しては、複雑に怒りと戦争に自分も加わった自己嫌悪で気が立っています


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そしてCIAと名乗るワタナベ=タナカとサトウ=スズキ、この2人に対しては素子も疑いの目で接します。


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そして「見て見ぬふり」のCIAにすっかり怒りをあらわにし、「俺があいつを殺してやる」と宣言するバトー。

予断ですが、戦争によるPTSDはアメリカでは長く見て見ぬふりをされ続け、そのことにより戦争によるPTSDの兵士は社会から除け者にされ続けてきました。そういうことも描いているんじゃないかなぁなんて思うわけですが、いかに…。


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やがて犯人を追い詰めるバトーですが、彼との戦闘と会話のうちに過去の辛い経験を思い出し、我を忘れそうになります。
バトー自身も戦争で苦い経験を持っているのです。


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そして数発の銃声後、バトーは弾を横にそらし、
「俺の戦争はとっくに終わってるんだ!」
と自分に言い聞かせるようにして、叫びます。


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そしてマルコは逮捕されますが、CIAが「帰り分のチケットは(自分達の)2人ぶんしかない」と、もとよりバトーが怒り狂ってマルコを射殺させて真実は隠ぺいさせようとしていたことがわかる発言をします。
それに対して真実を知ったトグサも
「死体袋じゃなくて悪かったな!」
と怒りをあらわにしてCIAに飛び掛ります。
トグサの優しさを感じるシーンですね


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そのことを聞いてか聞かずか、少し安心した様子のバトーは、
犯人を射殺するんじゃないかと心配していた素子に
「どうせ変えられない過去なら、いっそこのまま墓まで持っていくさ…」
と冷静かつ残念そうに呟いてその場を去ります。

それに対して素子は
「こんどはひとり救ったじゃない」
と慰めます。

そしてその後!ここ重要。かも(?)


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その慰めを聞きつつ階段を上がっていくバトーですが、あと少しで昇りきるというところで、急にまるで逃げるように身を消していくように見えます。





ひょっとして泣いてたんじゃ?


それで愛する素子にそれを見られまいと思って急いで…


切なかわいいな、バトー。
あんたのその純粋なところが好きだ、ホント


バトーって感情豊かですから、怒ったり泣いたり、いい人です


20060527150944.jpg


それを見届ける素子の目もまるでそれを悟ったかのようで…、

御熱いことです…

原作にはない二人の関係ですが、SACの魅力です


20060527145024.jpg


そしてこういう回こそエンディングテーマのLithium Flowerが哀愁漂ってていいですね~



えーと、以上、途中から考察になってない気もしないではない様な気もしますが(笑)今回はこの辺で。

参考文献
ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)
(1974/12/24)
サリンジャー

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戦争PTSDとサリンジャー―反戦三部作の謎をとく戦争PTSDとサリンジャー―反戦三部作の謎をとく
(2005/10)
野間 正二

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Comment
  
確かにあの回が地上波で放映できないもの仕方がない。PTSD症候群に関する考察、サリンジャーとの関連があったのだな、ふむ。


マルコにとって戦争は終わっておらず、自分の存在する意義もあの残虐な行為によってしか満たすことができなくなっているように感じた。彼もまた可哀想な戦争の被害者なのだ。

こんなエピソードも描くことができる程、攻殻という作品は懐が深い。益々のめり込んでしまうな・・・・・=3


ちなみに、ラストのバトーを見送る少佐のシーン、内容は異なるがワシのブログで次のネタに考えていたところだった。個別の意思を有しながらも、求めるところは同じだったなww
課長 #grGQ8zlQ 2006.05.27 Sat 16:53  [URL] [Edit]
なんとかアップ完了  
今回のは10分程度で練った計画のもと展開された考察なので多々無理な点があるかもしれませんが、それ故自分自身では2度は読みませんともww

こういうディープな作品感はより1作目シリーズのほうが強い気がして、わたしは無印SACが好きですねー
もちろん2ndも大好きですが。

>ワシのブログで次のネタ
フフフ、実は課長さんの脳にハッキングして、情報盗まして頂きました。
まだまだ防壁が甘いですよ?
という、私の擬似記憶w

楽しみにしてますね~
クロマ #ZCZy.3M6 2006.05.27 Sat 18:25  [URL] [Edit]
  
「うってつけの日」



いいところ突いてきますね。
私はお二人のようにまとめようとか思いもせずに、ただただバトーの男らしさに惚れるだけ・・・。
残酷なシーン満載でお茶の間向きではありませんがね。


最後の素子の意味深な目線も、放っておいてやる女のやさしさでてますよね。
ああ、いいシーン
リプレイありがとうございます。
トグサもいい仕事しましたよね。
俺の代わりに怒ってくれた、って感じ。
バトーも救われたよ。
ああ、いい奴だおまえ。



この話はじつのところ二人の男の生き様の対比だったかな、と思います。
人でなしの世界を覗いた男がその後どうやって生きのびてきたか、
陰惨な過去を抱えたものは人としてどう乗り越えるべきなのか
殺戮を繰り返すマルコと彼を制止するバトー
この構図が人は別の生きかたができるんだ、という可能性を示唆しているのかと。





「俺の戦争はとっくに終わってるんだよ!!」




俺は乗り越えたんだからお前にだってできるだろう?
もしくは
忘れようにも忘れられないことなんだから、抱えて歩いていくしかねぇだろ。
そういっていたように思います。
悲惨な体験をしたもの同士で、マルコは過去を払拭できず、バトーはそれを飲み込んだんですね。
ついで「墓まで~・・・」
バトーの強さを感じるとともに永遠に罪を背負って生きてやるという、悲壮な覚悟でもありますね。
バトー!泣いてもいいぞ!!



バトーもまた、あんな行為ではないにしても戦場で沢山の命を奪ったという自覚があるのですから。
ついでにいうと素子も同様。
お互いが同じものを見てきたから分かり合える。




「・・・でも、おまえのがぜんっぜんつえぇよ」




バトーが素子に頭が上がらないのには、感情をコントロールできる素子に比べて、おれってまだまだガキだよな、って気持ちがあるのかも

もうそう、もうそう・・・

がぶ #- 2006.05.27 Sat 21:38  [URL] [Edit]
管理人のみ閲覧できます  
このコメントは管理人のみ閲覧できます
  
プレステ黒派の月です、こんばんは。
運が良いのかあれだけ壊れやすいと言われるプレステ2も未だに健康体です。

サリンジャーですか。そういえば映画監督の話の時のgo see bananafishのポスターとか、細部までサリンジャーにこだわってますよねSAC。

ナインストーリーズとフラニーとゾーイーは持ってます。エズミに捧ぐ、愛らしき口もと目は緑辺りは特に好きかな。
まだ読んでる途中なんですけど、シーモアの妹フラニーも物凄く社会システムの中で孤立してますね。というかグラース一家は皆やばい状態な気が・・・
こっちまで精神が不安定になってきそうなので、そんな時は


バトーさんの顔をみると安心します。
いつどこでも兄貴キャラです。
新作で素子への想いは届くかどうかも含めて(笑)、今後もバトーさんから目が離せませんね。
#JUGsyThY 2006.05.28 Sun 03:19  [URL] [Edit]
>がぶさん  
>いいところ突いてきますね。
お褒めの言葉ありがとうございます 笑

そうなんですよ、ちょっといろいろ厄介なので取り上げるかどうかと思ったのですが、それ以上に各キャラクターがいい具合にまとまっているので紹介しました。

素子もバトーに対してはすごく女らしく接してますよね。
トグサも「人間くさい」人情と言うか、そういうの感じますね。

好かれてるんだな、バトー。

ところでバトーって涙流すんですかね…?
あの義眼から水分の分泌が
あるのか?
ないのか?

必要はなさそうですが、あってもいい機能ですねぇ
クロマ #ZCZy.3M6 2006.05.28 Sun 13:06  [URL] [Edit]
>月さん  
うちのPS2もまだ健在です、薄型のほうですが既に1年は経過しているので心配で心配で…

>映画監督の話の時のgo see bananafish
まじっすか!?
追加しないと…。
あぁ、追加追加 笑

おっとサリンジャーシリーズ読破中ですか?
私は「大工よ、屋根の梁を」と「シーモア序章」も読みましたが、たしかにフラニーは社会システムから孤立していますね。
ゾーイーもなかなか自己中心的ですけど 笑

あの一家でまともなのは彼らの母親ぐらいですかね

で、攻殻ですが
Solid State Sosietyは続報が入り次第優先して記事にしますので、お楽しみに~
クロマ #ZCZy.3M6 2006.05.28 Sun 13:12  [URL] [Edit]
  
バトーに”汗機能”はあります
(#16心の隙間より・・・誤記憶?)
なので、実は涙機能もあるかもしれません。




しかし機能があっても泣けないかも。
男の子だもん(イミフメイ)
がぶ #- 2006.05.28 Sun 15:45  [URL] [Edit]
たしかにぃ~  
第16話、ボクシングですね
バッチリ汗かいてますね

涙は、うーん。

男の子だもん 笑

だからこそ隠れたのでしょう
クロマ #ZCZy.3M6 2006.05.28 Sun 16:16  [URL] [Edit]
TB事後承諾  
当方からもTBさせて頂いた。
内容的には繋がらないが、ネタということでご了承くだされ。

今後も関連記事にはお互いにTBさせていただければありがたい。よろしく。
課長 #grGQ8zlQ 2006.06.03 Sat 07:04  [URL] [Edit]
  
ええ、もちろん歓迎です。

なんかネットマナー的に相互TBはよくないなんて聞くんですけど、クロマ的には全然OKというか歓迎です。

「有用な情報は共有しないと!」

ですからご遠慮なさらずに~
クロマ #ZCZy.3M6 2006.06.03 Sat 09:54  [URL] [Edit]
  
はじめまして、こんにちは。

>「死体袋で悪かったな!」
と書いてありますが、これは
「ふざけるな!マルコが死体袋じゃなくて悪かったな!」
でした(BD版で確認)

授産施設について気になってたのですが擬似記憶だったとは・・・
いろいろと勉強になりますw
あおとり#やきとり #uaIRrcRw 2010.02.19 Fri 20:51  [URL] [Edit]
>あおとり#やきとりさん  
はじめまして。ようこそいらっしゃいませ。

>「ふざけるな!マルコが死体袋じゃなくて悪かったな!」
>でした(BD版で確認)
おっと、失礼しました。
なんでこう書いたんだろうと思いつつDVDで確認したら、
やっぱりご指摘の通りでした。
ありがとうございます、修正しました。

>授産施設について気になってたのですが擬似記憶だったとは・・・
あれはどこまでが擬似記憶なのか、怪しいところですね。
ラストにグローブのカットがあったので、アオイがあそこに居たというのは本当なのかな?と思いますが。
ネット討論に参加していた者もいるみたいですし、人物自体は実在みたいです。
クロマ #ZCZy.3M6 2010.02.20 Sat 13:26  [URL] [Edit]






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前記事に義眼の話題が出たので、ついでに一言。
2006.06.03 07:02
 
 
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